こんにちは。トレイルランナーズ大阪の安藤です。
今年読んで最も面白かった本の再紹介です。このサイトでは珍しく、新刊ではなく2012年発刊の『良いトレーニング、無駄なトレーニング 科学が教える新常識』。著者は物理学博士で、元カナダ代表ランナー。タイトルや表紙から、「中身の堅そうなスポーツ科学本だな」と思ったら、大間違いです。中を開けてみると実に読みやすく、面白い!Q&A形式で単なる運動雑学本ではなく、具体的な研究結果なども引用し、解説しています。
たとえば、ひと昔前にランナーの間で心配されていた、「ランニングのし過ぎは心臓発作が起きやすくなる?」や、 「トレッドミルと屋外ランニングの違い」。日ごろジムでしか走ったことのない人が、いきなりロードのマラソン大会に出ると、レース前半で 筋肉の痛みや張りを感じることがあることについても指摘しており、レース前には屋外の舗装路ランニングで身体を慣らすことを著者は薦めています。これは夏場や冬場にジムのトレッドミルで走ることの多くなったランナーの方も要注意です。
その他、以前巷では賛否両論の分かれる、「コンプレッションウェアって、本当に効果があるの?」など満載。
早速、本書のエッセンスのいくつかを見てみましょう。
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有酸素運動中に心臓を原因とする死亡事故が生じるのは、平均100万時間にわずか2回。そのうち94%は、運動と関係ない心臓の以上に起因している。
乳酸は「筋肉に痛みを感じさせる老廃物」ではなく、筋肉にエネルギーを供給する有用な燃料である。
カフェインは精神の働きを助け、摂取してから2時間は持久力が向上することが確証されてる。
運動時に音楽を聴いたりいるときには、被験者が苦痛をそれほど感じていないという研究結果どんな曲または速度が、運動に普遍的な効果をもたらすのかまではわかっていません
痙攣は、発汗による電解質の損失が原因だと考えられていたが、最近の研究は、筋肉の疲労に関連する神経の反射作用のバランスが失われることが原因である。
トレーニング後のアルコールの摂取によって、必要なカロリー摂取量が減ってしまうことは問題だ。2~3敗の飲酒なら翌日のトレーニングに影響はないが、4~5杯(人の体重によって異なる)以上になると筋肉の回復が遅れたり、必要な栄養素の摂取が阻害される可能性がある。
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ほか、「裸足で走ることにどんなメリットがあるのか?」「任天堂Wiiなどのスポーツゲームは運動代わりになるか?」など、思わずページを読み進めたくなる内容が満載です。「安藤さんから紹介いただいた本の中で、一番興味をそそられました」というランナーの方も多い、久しぶりの面白ヒット本です。
2012年発売でいまだ中古本も値崩れしていないことからも、注目の一冊です。
【正しい方向で努力をしていますか?】
『良いトレーニング、無駄なトレーニング 科学が教える新常識』アレックス・ハッチンソン著 Vol.60
≪目次≫
運動すべきでない暑さはどれくらい?
運動の効果はどのぐらいで薄れはじめるのか?
裸足で走ることにどんなメリットがあるのか?
コンプレッションウェアの効果は?
任天堂Wiiなどのスポーツゲームは運動代わりになるか?
筋肉疲労の原因は乳酸ではない?
筋肉が痙攣するメカニズムは?
コーヒーでパフォーマンスは向上するか?
観客の声援でパフォーマンスは向上するか?
管理人:大阪府生まれ。トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。2012年に起業、日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ、マラソン作家。指導歴12年で、初心者にもわかりやすい指導と表現で定評がある。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。2024年10月にAmazon(アマゾン)より電子書籍『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。