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【ここまで伸ばせる登山能力】『「体の力」が登山を変える』齊藤繁・著 Vol.075

【ここまで伸ばせる登山能力】
『「体の力」が登山を変える』齊藤繁・著 Vol.075

『「体の力」が登山を変える』齊藤繁・著 Vol.074

こんにちは。トレイルランナーズ大阪の安藤大です。

トレイルランニングは「マラソン+登山」の複合スポーツですから、走ることだけでなく、登山について知っておくことは必須です。市販されている本の多くは登山の楽しみ方を紹介したものが中心ですが、登山をスポーツとして運動生理学の観点から解説した本も出ています。

それが本日ご紹介する一冊、『「体の力」が登山を変える』。著者は高所登山における医学研究家で、自身も登山家。本書では「傾斜、移動速度と酸素消費の関係」「心拍数の定期的チェックの評価とフォロー」「呼吸で失われる水」まで述べられていて、あらためて勉強になりました。

特に「呼吸で失われる水分」はあまり考えたことがなかったので、登りペースの速すぎる人や体力のない人、つまり最大酸素摂取率の低い人が「よく喉が渇き、水を飲む」という理由がわかりました。言い換えれば、呼吸の荒い人はその分携帯する水も多くなるとも言えるでしょう。

どんな内容が述べられているか、さっそく見てみましょう。

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登山というのは、「物体」が「自分の体」であるだけのことで、正にこの作業を行うことです。平地を自足20キロで移動させることよりも、車のついた乗り物に乗せて時速40キロで移動させるよりも、はるかに大変な作業と言えます。トレイルランニングや山岳耐久レースは、尋常ではない運動負荷を与えて競わせていることになります。

下山の能力というのはトレイルランニングの下り坂での移動速度を除いてはあまり注目を集めません。

実力評価のために、がむしゃらに負荷を増やしたり、厳しいレースに次々と挑戦するのは、自然の厳しい環境を考慮すると危険な面があります。

トレイルランニングはマラソンに近い鍛え方をしますので、心肥大は避けられません。傾斜地を走り下ることは関節に大きな負荷をかけることになり、少しdも関節周囲の筋力が低下すれば、直接間接軟骨や靭帯をすり減らすことに繋がります。ソフトランディングに配慮しないと、生活に支障を生じ得るレベルの変形性膝関節症(膝の上下の軟骨や骨が擦り減って変形し、膝の屈曲・進展ができなくなる傷害)などを起こすことに注意しましょう。

着地衝撃は、足内の関節、足関節、膝関節、股関節、推間関節の順に伝わります。これらの関節を跨ぐ筋肉群をしっかりと鍛えておかないと、衝撃が関節軟骨や靭帯に直接加わるため、ケガや障害につながります。

「傾斜、移動速度と酸素消費の関係式」 から、傾斜に比例して運動強度が高まること、早く移動するほど大変なことがわかります。山道の登り坂を走るのが非常につらくなる理由です。

登りに特有の「つらさ」の原因は、筋力不足ではなく、筋肉にエネルギーを供給する能力の限界です。

乳酸産生が高まる運動強度の変換点はATと呼ばれ、この点での心拍数は「(220-年齢)-安静時心拍数×50%+安静時心拍数」登山の目的にもよりますが、トレーニングとして取り組む山登りのペースもこの程度を目標にするとよいでしょう。

ジムで傾斜をかけてウォーキング、ランニングをしている人は非常に少ないのですが、登山の趣味レーションという意味では、10~15パーセントの傾斜をつけてトライしてもらいたい。

呼吸の抵抗を少しでも減らすためには、空気が通過する道は幅が広いほど有利ですし、また、経路が短いほど楽なので、狭い鼻の孔経由だけではなく、広く空けた口からも呼吸するようになるのです。顎を出すのは、空気の通り道を直線に近づけるためと考えられ、そうすることで気道の抵抗が小さくなります。

呼吸する量が増えてくると、体の体温で飽和した水蒸気をどんどん吐き出すことになるので、呼吸による体の水分の損失も馬鹿にならない量になります。通常の呼吸でも1日に500~1000ミリリットルが失われると言われているので、呼吸量が増えればその分ロスが増えます。

呼吸で失われる水分は無視できない。

山登りの後に尿が濃くなり量が減少するのは、呼吸や汗からのロスが多い割に、水分の摂取が少ないためです。

空気が乾燥している地域での登山やカラッと乾いた日の登山、気温が低い日の登山では、吸い込む空気に含まれる水分の量が少ないので呼吸からのロスの比率が増えます。高所環境も気温が低く乾燥しており、更に、呼吸数が平地よりも多くなるため、高所登山では標高の低い山での登山よりもはるかに多くの水分が失われる。

▲ここまで

本書を読むことで、山の登りの実力と下りの実力、山で更なるパワーアップするためのヒントを得られます。よりトレイルランニングを楽しむために、ぜひ本書の登山の基本は知っておくべきでしょう。文庫サイズですので、ぜひ読んで見てください。

【ここまで伸ばせる登山能力】
『「体の力」が登山を変える』齊藤繁・著 Vol.074




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