【裸足フルマラソン日本記録保持者が語る「走りの極意」とは?】
『ゼロベースランニング』高岡尚司・著 Vol.113
本日ご紹介するのは裸足フルマラソン日本最高記録保持者(2012年の湘南国際マラソン2時間45分39秒)で針灸・あん摩マッサージ指圧師でもあるランナー、高岡尚司氏が「ゼロベースランニング」について提唱する一冊。
「裸足」「裸足でフルマラソン」と聞いて抵抗のもった方もいると思いますが、本書で述べられているのは、裸足で走ることの推奨ではなく、ランニングの本質です。
といっても、よくあるランニング本ではありません。
学生時代から箱根駅伝を目指し、ケガの繰り返しに果てにたどり着いた、著者自らが実践し体得した、かなり本格的に解説された本です。
著者は本書で、こんな思いを述べています。
<大切なレースを冴えない顔でゴールするランナーも見たくないのです。せっかく走るなら、気持ちよく、スピードに乗って、笑顔でゴールする。>
<着地がどうとか、腕振りがどうとか、そういう枝葉を論じてはいないし、筋力トレーニングを推奨するものでもありません。もちろん、月間走行距離のことを取り挙げてもいません。現代を生きる僕たちが忘れているような、人間が本来持つ機能や動きに再度気づいていただくための指南書です>
<体には、まだまだ気づいていない力が眠っています>
その力が眠ったままになっている。このことこそが多くのランナーがケガや故障に思い悩む原因だと思いますが、本書では、それでは実際に人間本来が持つ機能や動きをどのように取り戻せばよいか、著者自らが写真と解説で登場しています。
早速本書のエッセンスを見てみましょう。
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ランニングとは、「重力による垂直方向への落下の力を、滞りなく進行方向への推進力に変換する運動」のこと。重力と、人間に与えられた身体の構造と機能を調和させることです。この概念は「ナチュラルランニング」と呼ばれています。
僕が提唱している「ゼロベースランニング」は、このナチュラルランニングの概念をベースにしたメソッドです。
母指球で踏み込む必要などありません。胴体の動きの結果として、胴体の真下よりかなり後方で、離地の直前に自ずと母指球に二重されます。
腕は「振る」のではなく「振られる」。
裸足で走ることがそのまま自動的にランナーの故障を改善するのではなく、裸足で走るメリットのひとつは、人間としてあるべき身体の使い方ができているのかどうかを、身をもって知ることができるということ。
ふくらはぎの肉離れから気づいたことは、胴体を使って走ること。
▲ここまで
「母指球で踏みこまなくてよい」「腕は振るのではなく振られる」「地面を押し下げても無駄」「足首のキックに頼るな」など一般ランナーの常識からすれば、目からウロコの視点が示されており、 自分の走りのあり方を考える、良いきっかけになります。
こうしたランニング本を読むのが初めての方やランニングビギナーの方には難しく感じられるかもしれませんが、ブログ記事のように章ごとに短めの文面で区分けされ大変読みやすくなっています。一度だけでなく二度、三度と繰り返し読むことで理解が深まります。
ランニングの本質についてこれほど深く書かれた本はないでしょう。
空手、合気道など過去に武道の経験のある方にはより理解しやすいでしょう。私の場合は10年以上格闘技をしていたこともあって、テコンドーでは「重力を利用して強いパンチを打つ」などしますから、著者の「重力を上手く活用する」という考え方はすっと胸に落ちました。
本書を読んで、どうすれば自分の身体の機能を取り戻すことができるか、ぜひ考えてみてください。
【裸足フルマラソン日本記録保持者が語る「走りの極意」とは?】
『ゼロベースランニング』高岡尚司・著 Vol.113
管理人:大阪府生まれ。トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。2012年に起業、日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ、マラソン作家。指導歴12年で、初心者にもわかりやすい指導と表現で定評がある。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。2024年10月にAmazon(アマゾン)より電子書籍『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。