・フルマラソンや高強度のきつい練習の直後にやるべきなのは、ストレッチではなく筋肉を冷やす「アイシング」です。
・筋肉や関節が硬すぎると肩こりや腰痛を招いたり、運動のパフォーマンス低下につながったりすることもあります。
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
本日は数多くの著書を持つフィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一氏による最新刊。今回は著者の「ストレッチ」ノウハウを詰め込んだ一冊。
「「運動前のウォーミングアップのためにストレッチをする」「アキレス腱が切れないようにストレッチをして伸ばしておく」、それに「強く痛みを感じるくらいまで筋肉を伸ばしたほうが効く」すべて間違いなのです。」(本著より)
今回も思わず唸ってしまう内容が満載です。
本 著を読んで思い出したのは、もう何年も昔に参加をしたトレイルランナー鏑木さんのセミナー。9:00集合で自己紹介もそこそこにすぐ出発。当時は「まずみんなでストレッチはしないのだろうか?」と疑問に感じ、驚いたのを覚えていますが、振り返ってみれば、開催地が鎌倉近辺であり、足上げを必要とされる急階段も少なく、トレイルに入る前のジョグがウォームアップに繋がっていれば、 「ストレッチは特別に不要だった」とも思えます。
さて、日ごろ僕の元には「マラソンとトレイルランニングは使う筋肉が違いますね」という感想をいただきますが、求められる可動性と安定性が違います。マラソンは平地や坂道を走るスポーツ。トレイルランニングは、一般登山道を舞台としたスポーツ。
当然ながら急な階段差や下りがれ場もあります。同じランニングでも、運動に求められる要素はまったく異なるスポーツです。つまり、大会を楽しく完走するためには平地をただ走るだけでなく、それに向けたトレーニングが必要になります。
数年前まではトレイルで足を攣ったり、「階段で足が上がらない」といった方がツアー中に多くいました。「ツアー運営をスムーズに、かつ楽しく走ってもらうためにはどうしたらいいか?」そこで改善したのはスタート前のスト レッチ内容を見直し、ウォームアップだけでなく、股関節の可動域を高めたりするものに変えたところ、依然と比べそうした声が激減しました。こうした経験から、本書の中で語られているストレッチにおける誤解や重要性はひしひし感じます。
◆本著より
「ストレッチをしてアキレス腱を伸ばす」という人がやっているのは、多くの場合ふくらはぎの筋肉のストレッチです。
アキレス腱は靭帯最大の丈夫な腱で、体重の7~8割の重みに耐えられます。そんな最大にして最強の腱が、スポーツ中の激しい動きの最中に切れるのであればまだ納得できるのですが、日常生活の些細な動きでも切れることがあるのです。
そして、残念なことにふくらはぎの下腿三頭筋をストレッチしても、それがアキレス腱断裂の予防に直接つながるという科学的根拠はありません。
静 的なストレッチで筋肉は温まりませんから、ウォーミングアップにはならないのです。「股関節はどこにありますか?」と質問をすると、文字通り「股間を指す 人が少なくありませんが、そこではありません。股関節は骨盤の左右の外側にある凹みにあります。そこに丸みを帯びた太ももの骨の先端がはまり込んでいま す。 筋肉や関節が硬すぎると肩こりや腰痛を招いたり、運動のパフォーマンス低下につながったりすることもあります。関節に可動性は不可欠ですが、それと ともに関節を支える機能も不可欠です。
フルマラソンや高強度のきつい練習の直後にやるべきなのは、ストレッチではなく筋肉を冷やす「アイシング」です。
フ ルマラソン直後のストレッチはよくないとしても、1日か2日たって急性の炎症や痛みが引いてからは、できるだけ早い段階でストレッチをするべきです。その まま放置しておくと筋肉はどんどん硬くなって関節の動きが悪くなります。可動性も安定性も低下してしまい、練習を再開したとしても、前のレベルの練習内容 に復調するまでに時間を要することになります。
マッサージにはストレスを軽くしたり、こり固まった筋肉をほぐして一時的に血流を改善したりする効果があります。しかし、ストレッチのように低下した柔軟性を回復させる効果はありません。
◆パートナーでストレッチを行う場合の注意点
1.パートナーは手をしっかり温めておく
2.反動を使ってストレッチをしない
3.体重を乗せるような強い負荷をかけない
4.ストレッチする人の反応をつねに確認する
『運動前のストレッチはやめなさい カラダを痛めず硬さをほぐす 効果倍増メソッド (SB新書)』中野ジェームズ修一

管理人:安藤大(あんどう ひろし)大阪府出身。プロ・ランニングコーチ。2012年から「はじめてのトレイルラン教室」を開講、21都道府県で1万人以上が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓発活動に注力し、グループで走る楽しさを伝えている。
15年で参加をした大会は「28か国、28都道府県」で100を超え、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現中。
2024年10月に『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。Amazon2部門1位&ベストセラーに。