【風邪は咳やくしゃみではうつらない。風邪の予防に本当にマスクは効果がある?】
『かぜの科学―もっとも身近な病の生態』ジェニファー・アッカーマン・著 Vol.002
「会社の席で隣の人が咳やくしゃみをしていたから、風邪をうつされた。」
「家族が風邪をひいているので、キスをしたら風邪がうつった。」
その”常識”が正しいのかどうか、考えて見られたことはありますでしょうか?
こんにちは。
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
僕が2015年に本をレビュー紹介して、毎年売れ続けている本があります。それはランニング本ではなく異色の本、『かぜの科学―もっとも身近な病の生態』。風邪を一度もひいたことのないという人はおそらくいないのではないでしょうか?その風邪だけを徹底的に取り上げ、以前はAmazon.co.jpでは中古でプレミア高価格もついていた本が今は文庫化して安くなっています。「かぜの科学」という本のタイトルから難しい専門書をイメージしていましたが、日ごろあまり本を読まない人でも読みやすく、自分の身に最も起こりうるであろう身近な病気の内容だけに一気に読破してしまいました。
スポーツでもそうですが、まずライバル(風邪)のことを知るって大切だと思います。
これまでスポーツ栄養学やダイエット健康関連の本は読んでも、病気そのものに関する本は読んだことはなかったのですが、毎年11月、12月になると風邪によるキャンセルの知らせが僕の元へ急激に増えるので、そうした方へのアドバイスにも役立つだろうと書店で手にとってみたところ、「あまりに知らないことばかり」で夢中になってしまいました。
僕はいつも「健康の常識を疑え!」と話していますが、まさに「マラソン大会が近いので、移動中はマスクをして歩く。」という“常識”も、どこからか植えつけられたものであったことに気づかされることでしょう。医学がこれだけ発達した世の中で「なぜ風邪の治療薬(特効薬)ができないのか?」そのわけを知り、納得。
僕が旅行したデンマークでは、税金の高さは世界一ですが医療制度が非常に充実にしています。がんなども大病に関しては政府の援助があります。ところが、です。風邪の場合、日本と違って自費負担比率が高く、そのため風邪ぐらいで病院へ行く人はいないそうです。これには「風邪の初期症状で病院を訪れる人は毎年多く、政府や病院は本当の重患者のために時間を割きたい。」という思惑も施策の中にあるようです。
このデンマークの話も風邪の特効薬ができない理由に繋がっている気がします。「石鹸やシャンプーなど殺菌・抗菌効果のある製品は風邪の予防には効果がない」というのは衝撃でした。(このことは「風邪」についての話であって、その他の「細菌」を原因とする病気(食中毒等)予防に関しては別の話です。)
個人的に心がけているのは、少しでも体調が悪いなと感じたら、すぐさま「暖かくして、早く寝る」。シンプルですが、僕が長年続けてきたこの習慣は本書を読んで間違っていなかったと確信しました。現に僕は過去5年間風邪をひいた記憶がありません。やはり「生活リズムが不規則で、睡眠時間の短い人は風邪を引きやすい」というのは事実としてあります。
毎年季節になると話題にことかかない、風邪。ご家族やお子さんの予防のためはもちろん、目標マラソン大会を風邪で不参加になることがないよう、あるいは体調不良で出場することがないよう、ぜひ読んでおきたい一冊です。
◆本著より
抗生物質や殺菌効果のある製品は効き目がない。
ここにいる若者の一部は、その病原体が細菌だと考えているらしい。だが、そうではない。ウイルスなのだ。だから抗生物質は風邪には効かない。効果はゼロ、皆無だ。抗生物質は細菌が細胞壁をつくるのを阻むことで細菌を殺す。ウイルスは細胞ではないから細胞壁をもたず、したがって抗生物質はまったく効かない。これはまた殺菌効果をうたう石鹸、シャンプー、ローションが風邪の病原体に効果をもたない理由でもある。さまざまなキャッチコピーにもかかわらず、これらの製品を使ったとしても、あなた自身も、あなたの友人も、あなたの家族も、風邪を予防することはできない。風邪は咳やくしゃみではうつらない唾液にはほとんど(あるいはまったく)ウイルスが含まれておらず、くしゃみによって飛沫になった唾液が感染を広げることはあまりありそうにない。
ウィンザーによれば、咳やくしゃみによって発生する飛沫が風邪を広めるという証拠はないに等しいという。「くしゃみをするときは、まず鼻がムズムズして、高圧の空気が押し出されます。このときに口の前のほうにたまった分泌物が体外に出るわけで、鼻から出るわけではありません」。唾液にはほとんど(あるいはまったく)ウイルスが含まれておらず、くしゃみによって飛沫になった唾液が感染を広げることはあまりありそうにない。実際に、研究者たちが重い風邪にかかったボランティアのいる部屋で空気の検体を採取して調べたところ、82パーセントもの空気を調べたにもかかわらずウイルスはまったく検出されなかった。さらにボランティアがウイルス検出用の物体表面に向かって直接咳やくしゃみをしても、ウイルスが検出されたのは25回のうち2回のみだった。
慢性的なストレスの影響下にある人は、そうでない人の2~3倍の確率で風邪をひく。
最近の研究でも、睡眠と風邪のかかりやすさには確かに関連があることが示されている。2009年、カーネギーメロン大学のシェルドン・コーエンらは、毎晩の睡眠時間が7時間を割る人は、8時間以上寝る人に比べて3倍以上風邪の罹患率が高いことを見出した。睡眠効率、すなわちベッドで実際に睡眠に費やされる時間はより大きな影響をもっていた。(中略)
全体の睡眠時間の2~8パーセント(平均睡眠時間が8時間としておよそ10分から40分)眠れなかっただけで、その人はすぐに寝ついてぐっすり寝た人と比べて風邪の罹患率が5倍にもなった。
風邪は咳やくしゃみではうつらない『かぜの科学―もっとも身近な病の生態』

管理人:安藤大(あんどう ひろし)大阪府出身。プロ・ランニングコーチ。2012年から「はじめてのトレイルラン教室」を開講、21都道府県で1万人以上が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓発活動に注力し、グループで走る楽しさを伝えている。
15年で参加をした大会は「28か国、28都道府県」で100を超え、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現中。
2024年10月に『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。Amazon2部門1位&ベストセラーに。