「あまり知られていないことですが、2013年12月の福岡国際マラソンには、私を含め東大関係者(卒業生と現役学生)が13人も参加していました。」
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
これまで、「ランニング本」というと、金哲彦さんのようなランニングコーチやフィジカルコーチ、整体師など専門家によって書かれたものが中心でしたが、本書は異色の一冊です。
本書は、東大卒業生で現在は一般企業に常勤で働くランナーが、市民ランナー目線で、ランニングノウハウを解説しています。「ノートが綺麗にとれない人は、東大に合格できない。」という有名な逸話がありますが、東大卒の著者がランニングや練習メニューの組み立てについて説明するとわかりやすく、すっと内容が頭に入ってくるから不思議です。
本書では、具体的な経験談を挙げながら、「自分の頭で考える」ことの大切さを説いており、タイムが伸び悩む読者にとって「自分に合った練習メニューとは何なのか」を考えな直すきっかけになると思います。東大に入学するぐらいですから、本を多読することには抵抗がなく、研究熱心で、自ら練習メニューを組み立てられる点が強さの秘訣ではないでしょうかと本書を読んで感じました。
著者はあの川内優輝選手とも一緒に練習していたこともあるそうですが、東大卒の経験に加え、文中の「親の期待に応えようとした」という一文に、川内選手と同じものを感じました。
僕はいつも本を電子書籍で読むことが多いのですが、Kindleではほかの読者がマーカー線を引いたところが強調表示されます。つまり、今ランナーが何に悩 んでいるのか、どういったことに関心があるのかがわかります。価格以外の点で、電子書籍は僕には非常に役立っています。本書で経験談よりも自己啓発的な励ましの言葉や断定的なアドバイスに多く線引きされていたのには、興味深かったです。
本やサイトに解決を求めるのではなく、「自分の頭で考える力」を身につけましょう。
巻末の東大生ランナー対談も要チェックです。
◆本著より
一番大切になるのは、「自分の頭で考える」ということ。
大切なのは”その日、その練習時の感覚”を重視して、走り始めてからの体調やフォームの善し悪しを踏まえながら、ペースや距離の修正をためらわないことです。
マラソンの練習法に唯一の正解はありません。自分の頭で考えて仮説と検証を繰り返しながら、自分に合った練習法を模索し続けるのです。
月間走行距離にこだわらず、ポイント(強化)練習を7割くらいの力でこなすことをベースにしたほうが絶対に伸びると思います。
目標達成に必要なのは全力の練習ではなく、7割くらいの力での練習なのです。レース本番でも全力で走るわけではありません。7割くらいの力でどこまで押していけるかが、マラソンでの目標達成の肝。その7割くらいの力の底上げこそ、練習の目的なのです。
質を保ちながら量で調整する。市民ランナーは距離で帳尻を合わせて内容に目をつぶることが結構多いですけど、逆ですよね。
レースではイーブンペースで走るのが理想ですから、距離走のような練習でも、前半から後半に向けて段階的にペースを上げるいわゆるビルドアップ走は基本的に取り入れていません。しかし、練習は可能な半に内でペースアップさせて終えるようにしています。
平日の練習はコンパクトにまとめたとしても、記録を狙うなら週末に長い距離を踏む練習は欠かせしてほしくないと思います。
10000mは5000mの2倍の距離ですが、1kmあたりのペースは6秒落ちます。ハーフマラソンは10000mの距離の2倍強ですが、やはいrペースは1kmあたり6~7秒落ちます。そしてマラソンはハーフマラソンより1kmあたり8~9秒落ちます。
1000m×7本のインターバル走はサブ4狙いなら5分20秒/km、サブ3.5狙いなら4分40秒/km、サブ3狙いなら3分55秒/kmとなるのです。400mトラックでやる場合には、それぞれ2秒(5秒/km)ほど上げるわけです。
中・上級者にLSDはいらない
練習メニューはあくまでもたたき台。自分で好きにアレンジすべきですよね。大学受験の参考書と同じように
記録を狙うレースは年1、2本に絞る。
マラソンは個人スポーツでもあり、集団スポーツでもある。
『東大式マラソン最速メソッド「考える力」を磨いてサブ4!サブ3達成』松本翔・著

管理人:安藤大(あんどう ひろし)大阪府出身。プロ・ランニングコーチ。2012年から「はじめてのトレイルラン教室」を開講、21都道府県で1万人以上が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓発活動に注力し、グループで走る楽しさを伝えている。
15年で参加をした大会は「28か国、28都道府県」で100を超え、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現中。
2024年10月に『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。Amazon2部門1位&ベストセラーに。