【元小学校教員がやさしく教えるトレイルランの技術・知識】
『ヤマケイ入門&ガイド トレイルランニング』小川壮太・著 Vol.077
ここ数か月、自社主催の練習会への参加やコーチングの依頼が増えています。
皆さま、「ランニングのケガや故障に悩んでいる」ということ。
沢山のランナーの走りを見ていると、その人が抱えている走りのクセが見えてきます。
主催イベント中にひと通りの講習をした後で、「山の歩き方や下り方を練習しましょう」と言って、何本か歩いたり、走ったりしてもらうことがあります。すると、その人のクセや課題が見えてきます。
そうやって最初に動きを見ることで、
「今日はこんな講習をした方がいいな」
「あの方には、動きを教えるよりもすぐさま使えるテクニックを教えよう」
「この動きを無理にさせると、苦手意識が芽生えるな」
というように、頭の中で何をすべきかが組み立てられます。
なぜ頭の中ですべきことが分かるかというと、何百回もさまざまなランナーの走りを見てきたからです。僕自身もすごく勉強になります。
本来走ることは自由で楽しいことのように思うのですが、走ることに苦しんで欲しくないです。
そんな想いを僕は持って、練習会やコーチングをしています。
本日の一冊は、 『ヤマケイ入門&ガイド トレイルランニング』。
著者は山梨県甲州市出身で、2015年の3月に安定した小学校教員を退職しプロの道へと進んだ、 プロトレイルランナー小川壮太さん。チームサロモン所属。小川壮太さんと言えば、プロ転向後すぐに王滝村で行われた「トップ・オブ・ザ・トレイルランナー50k」で優勝し華々しいプロデビューを飾られ、元々が教員だけあって、丁寧かつ理論的な解説には定評があります。
実はこの本、一度発売日が延期となり、3月18日の発売と同時にAmazonの登山・ハイキングランキングで第一位に輝くと同時に売り切れて、7日から11日入荷待ちとなった本です。
こうしたトレイルランの本はこれまでにも出版されていますが、シューズやレインウェアだけでなく、サポートタイツからトレッキングポール、救護用品、マナーからトレーニング、レースまでひと通りページを割いて網羅され、「登山とトレイルランニングの違いについて」「欧米のトレイルラン文化とは」といったテーマにも触れられている点は貴重です。
早速、本書のノウハウを少し見てみましょう。
【本書より】
ランニング技術を上げていくことで、石を蹴散らしたり路面を削ったりすることもなくなります。強いランナーは、さながら山に溶け込む忍者のようです。
ピッチを落とさず、歩幅を広げて登るトレイルラン独特の山歩きをパワーウォークといいます。
ヒルクライムは、水平方向の運動(ランニング)だけでなく垂直方向への運動(体を持ち上げる)が加わります。前腿・大腿四頭筋を酷使しがちですが、骨盤を立てることで、広背筋、大殿筋、大腿二頭筋を使うことが可能になります。
脚を引っかけ、つまずくのは、どこをどう引っかけているのでしょうか。それは、視界に入っている前方に振り出した足ではなく、背面に待機しているほうの足元を引っかけているのです。下りで脚部が沈み込みすぎてしまうと、自分がイメージしているポジションよりも姿勢が低くなってしまい、身体の背面にあって目で見ることのできない足先が障害物に当たってしまう、というわけです。
———————————————–
あまり書くとネタバレになりますので、詳しくは本書を見ていただきたいと思います。
各地のさまざまなランナーが薦めるトレイルコースも紹介されており、 入門者から経験者まで幅広く学べる知識を網羅した一冊となっています。
本体価格1980円は「本」として見れば少々高く感じられるかもしれませんが、「教科書」として考えれば十分に妥当だと思います。これは、ぜひ読んでみてください。
【元小学校教員がやさしく教えるトレイルランの技術・知識】
『ヤマケイ入門&ガイド トレイルランニング』小川壮太・著 Vol.077
【目次】
第1部 トレイルランニングの世界
1トレイルランニングとは?
楽しみ方/私が始めたきっかけ/登山とのちがい/ロードからトレイルを始める人へ/登山からランニングを始める人へ
2トレイルランニングに必要な装備と用具
シューズ/レインウェア/バックパック/ヘッドライト/保温着(ウィンドシェル)/サポートタイツ/トレッキングポール/アンダーウェア/その他ウェア(ソックス、帽子、手袋など)/シチュエーション別(日差しが強い、雨、疲労困憊など)便利アイテム/食料/レスキューアイテム/アイテムのメンテナンス/小川流の装備
3ランニング技術
ヒルクライム/ダウンヒル/長距離コース/短距離コース/テクニカルなコース/悪天候時/トレッキングポールの使い方/効果的な水分摂取/効果的な栄養摂取
4プランニング
コース設定/地図を使ってルートを考える/地図の読み解き方/季節によってコース設定を変える/フィールドに出る前に/天気予報の賢い利用法
5登山技術
パッキング、フィッテイング/ケガの防止方法/テーピング/山中での病気/ファーストエイド記録/ビバーク/登山届と山岳保険/マナー
6トレーニング
トレーニング方法について/小川流トレーニング/ストレッチ/日常生活でできるトレーニング/本格的トレーニング/体のケア/食事や睡眠
7トレランレースと登山
身近なフィールドを走ってみる/トレイルランで登山に出かける/トレランレースに出てみる/レースの選び方と探し方/レースに備えて/レースが始まったら