【マンガ家が書いた非常識マラソンメソッド】
『走れ!マンガ家 ひいこらサブスリー』みやすのんき・著 Vol.119
マラソンの競技人口も増加する一方で、マラソンに関する本も年々増加傾向にありますが、もはや出尽くした感があると言っていいでしょう。
ランニングはほかの競技スポーツと比べて非常にシンプルな動作で、そのトレーニング方法やトレーニングの考え方はすでに何十年と前に確立されているものです。
そんな中、異色とも呼べるランニング本が登場しました。
それが、本日ご紹介する『走れ!マンガ家 ひいこらサブスリー』です。
タイトルから「マンガを中心としたランニング本なんだ」とイメージしますが、マンガは少なめで文字量の方が多めです。
著者の みやすのんき氏は、1962年生まれのマンガ家。学生時代に元陸上部や実業団育ち、マラソンの指導者でもない一般市民ランナー。本格的に練習を始めてから 1年半で、4大会のフルマラソンに出場し、52歳でサブスリーを達成。85kgあった体重も57kgにまで減量。そこに至るまでの試行錯誤を記したのが本書です(ちなみに著者が減量した方法については多くはページを割かれていません)。
・腰高意識、ならぬ腰低意識を提言します
・重要なのは骨盤前傾ではなく股関節の屈曲
・「足首を固めて地面の反力をもらう」?
・拇指球で押す動きは無駄です
・骨盤を動かしているのは骨盤ではない
など、これまでマラソン・ランニング本をいくつか読んだことのある方なら、これまでの考え方を否定されてしまうような、頭が混乱してしまうような衝撃を受ける内容が書かれています。
気になるポイントを、いくつか見て行きましょう。
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推進に使われるのは、お尻の筋肉と大腿裏のハムストリングスになります。そうすれば、お尻がキュッツと引き締まって高く持ち上がり、スタイル抜群になれます。
後ろの足を上に意識的にあげると、ハムストリングスが働いて力みが生じてしまいます。
腿上げで膝を上にあげたり前に出そうという意識は足先が最短距離で移動でず無駄な軌道を描いてしまいます。
「ホウキのように後ろに掃く動作が大切である」と間違って教えるインストラクターもいます。正しくは地面に着地した瞬間から、足は前に戻そうという意識を持たなくてはいけません。
足を開いてストライドを伸ばすのではなく、空中に浮いてる前後の足の挟み込み動作の時にストライドが伸びるのです。
一般市民ランナーは「前の膝も高く上げなきゃ」という潜在意識から、腿上げを一所懸命練習して、とにかく膝を高く上げようとします。トップランナーたちは「前に膝を高く上げて」ではなく素早くしたに着地しようとする真逆の意識なのです。
ケニアやエチオピアのトップランナーは、みな「腰低で低空で走っている」のです。
「腰を回す」とは、背骨を捻るのではなく、「足の付け根である左右の大転子を動かす」ということなのです。
骨盤の下ではなく横にある大転子に意識を持ち、腰を緩めて歩いたほうが足を長く使えるようになり、歩幅も広くなります。
骨盤は着地衝撃で左右に上下する
「頭を前に出しましょう」と書いてある指導書もありますが、頭はとても重いので、それを支えるのに肩や背中がどうしても丸まってしまいがちです。
「アフリカ系のランナーは生まれつき骨盤が前傾している」というのは、実は間違っているんじゃないのかなと疑問が湧きました。
フォアフットは目的ではなく結果です。「フォアフットにしたら速くなる」のではなく、「速いランナーだからフォアフットになる」のです。
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「膝はまっすぐ着地しましょう」「身体を一本の棒のように倒して走りましょう」「腰の位置を高く保ちましょう」「足首や膝を固めて着地しましょう」「拇指球で蹴りましょう」世にまかり通っているランニングの提言がひと通り著者の考えで提言し直されており、これはマラソン指導者や解説者としては恐ろしい本が出たものです。
ところが、マンガ家がみなそうなのかはわかりませんが、これが非常に理論的なのです。
著者が努力家で勉強熱心なことがひしひしと伝わってきます。さまざまな国内のランニング本を多読しているだけでなく、洋書や海外英語サイトからも情報を得て、一般市民ランナーである自分の意見に説得性をもたせるために有名コーチの言葉や研究結果も引用しています。気に入った選手のランニングフォームのよい部分を真似したり取り入れたりしています。
著者が、教わる立場の側から書いたランニングの新常識。
ビギナーランナーを対象に書かれたようですが、どちらかと言えば、試行錯誤を繰り返してきたベテランランナー向けの本のように思います。
うかつに読むと危険な本ではありますが、より質の高い走りを追究したい読者には 新境地を開いてくれるはずです。
ぜひ読んでみてください。
【マンガ家が書いた非常識マラソンメソッド】
『走れ!マンガ家 ひいこらサブスリー』みやすのんき・著 Vol.119