【47都道府県のマラソン大会入賞、マラソンに人生を捧げた男の半生】
『マラソンに賭けた半生』レビュー 君野弘明・著 Vol.49
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
先日ご紹介した、『世界マラソン制覇に挑む』に続いて、またロードムービーのようなマラソンエッセイ集が登場です。
参考:『世界マラソン制覇に挑む~40年間走り続けた私の人生観』新井田晃・著
著者は鳥取在住の一般企業に務めるサラリーマン。40歳から健康のために走りはじめ、マラソンが趣味となる。ランニングと仕事の両立に悩みながらも、数々の市民マラソンに出場する。現在は定年退職を、82歳。そのマラソン半生を振り返るという内容です。
僕は知らなかったのですが、著者の君野弘明 氏という方は、知る人ぞ知る、伝説のランナーのようです。47都道府県のマラソン大会に出場したランナーの方はいると思いますが、著者は47都道府県すべてで入賞し、うち44都道府県で優勝という偉大な記録を残しています。40歳で走りはじめたその歳にハーフマラソン(20キロ)で1時間8分26秒や、50歳代でマラソン200勝の目標。49歳の一年をトレーニングに費やした。 」という本文内の記述からも、この方のすごさがうかがい知れます。
日本でマラソンブームが始まる昭和49年より前から走りはじめ、 アベベ選手と円谷選手の激走を生で目にしたり、いち早くインターバル走を練習に取り入れてみたり、日本のマラソン史の生き証人とも言えるでしょう。
早速、本書の中で気になった言葉をみてみましょう。
▼ ここより
朝ゆっくり走っていると、速足で学校に向かっている中学生が「おはよー」と笑いながら私を追い越していってしまうが、毎日5キロ走る。これは誰にでも当てはまるものではなく、人それぞれに違った行いがあると思う。
私は40歳以降の人生を走ることに決め、走ることが生活そのものであった。
ランニングと生活、そして仕事の矛盾を抱えながら、走ることを取り入れた。
私は走り出してからは仕事など前向きに発想できるようになった。くよくよしないようになった。なぜかわからないが毎日前向きに生きていける気持ちがはっきりと現れてきた。
市民ランナーには、市民ランナーにしかわからない苦しさと楽しさがある。
私の調整方法は、練習で走るのは正味週4日程度であるが、そのかわりレースでは全力を尽くすことを心がけているつもりである。
マラソンには意外性がない。自分自身を鍛えれば鍛えるほど、成績は上がっていく。
▲ ここまで
市民マラソンに半生を捧げてきた著者の言葉、「マラソンも人間の一生も同じである。たゆまぬ努力だけが、最後の勝利をもたらすのです。 」が胸に刺さりました。
40歳代、50歳代ランナーの方、あるいは著者と境遇が被るランナーの方には、共感できる内容だと思います。文庫サイズで通勤途中でも読みやすく、ぜひチェックしてみてください。
管理人:大阪府生まれ。トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。2012年に起業、日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ、マラソン作家。指導歴12年で、初心者にもわかりやすい指導と表現で定評がある。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。2024年10月にAmazon(アマゾン)より電子書籍『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。