半沢直樹シリーズや「下町ロケット」「ロスジェネの逆襲」数多くのベストセラー小説を世に送り出し、ドラマ化されている池井戸潤さんの最新作は『陸王』 。ランニングシューズを題材とした企業再生物語。
久しぶりに予約購入した小説。
発売日に書店で見て、本の厚さと字の小ささにちょっと身じろぎしましたが、購入して正解でした。
「いまいかに多くのランナーがいて、同時にいかに多くの故障者がいるのか。なぜ故障するのか、人間本来の走り方とは果たしてどういうものなのか。それに合うシューズとは何なのかー」
本文中のこの会話だけで読んでみたくなりませんか?
▼Amazon.co.jp内容紹介
勝利を、信じろ――。
足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。
埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。
社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。
チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?
▲ここまで
『下町ロケット』で描かれた中小企業の奮闘、今回も業績低迷にあえぐ老舗足袋製造企業がランニングシューズ開発という未知の分野への挑戦、奮闘がテーマになっています。後継者、運転資金、コスト、パートナー探し… 中小企業経営者の抱える悩みが話の中で続々と出てきます。
まさか池井戸作品に「タラウマラ族」「ビブラム」「ベアフット」なんていう言葉が出てくるとは思いもしませんでした(笑)
本書を読み始めてすぐ思い浮かんだのが、靴下専門店の全国チェーン「靴下屋」を一代で築いた、タビオ創業者の物語。ランナーの間では「5本指ソックス」で親しまれています。
ほか「ランニングシューズランニング足袋「MUTEKI/無敵」」伝統職人の匠技が創り出した足袋型ランニングシューズはすでに世の中に出てますので、よりリアルな話として読むことができました。
池井戸作品は読点の打ち方が独特ですね。「文頭一期目には読点は打たない」ことが物書きの原則のように学びましたが(たとえば「私は、~その日」はNGなど)読点が頻繁に打たれ、それが独特のリズム感を生み出しています。
題材がランニングシューズ開発ですので、ランナーの方は最後まで面白く読むことができます。本作品もドラマ化されたらぜひチェックしたいです。
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。